
趣向を凝らした装丁と、雰囲気たっぷりの挿絵。ザラッ、ツルッといった紙の質感やインクのにおいに、ページを繰る音。そしてあの、確かな重み。五感と、ひょっとしたら第六感まで研ぎ澄まして書棚から掘り当てるお気に入りの一冊との出会いはまるで、宝探しのよう。リアルな本屋さんでのみ叶うお楽しみを、どうせなら、800坪に35万冊を揃えるエリア随一のこの店で!
季節の絵本を特集した丸くて黄色い本棚と可愛いベビーブルーの棚を行き来し、真剣な面持ちで今日買ってもらう本を探す女の子。
手前の通路では、ヨチヨチとあんよしてきた男の子がおもむろに床へとしゃがみ込み、サンプル用の絵本のページをめくり始めたのですが、彼はまだ字を読めてはいないでしょう。それでも食い入るように猫の挿絵を見つめ、その背中あたりの柔らかな毛並み(紙です…)を撫でてみたり、指で文字をなぞってみたり。ベビーカーを押しながらようやく追いついたパパは、その姿に背後で優しい苦笑いを浮かべていました。
—— これは、「流山店はどこよりも児童書が熱いんです」という店長の声に促され、児童書コーナーを覗いたときに見かけた、二つの物語のほんのささやかな1ページ。
全国に約70店舗を展開する紀伊國屋書店の中で、1位2位を争うほどの売れ行きだという、流山おおたかの森S・C店の児童書コーナー。だからこそ、「人気の本の在庫を切らさないよう、気を配っています」と、店長は言います。
絵本の棚には・・・どんな事件もププッと解決する『おしりたんてい』や、誰もが必ず一度は通る『アンパンマン』など、テレビアニメ化もされた花形から、日常の何気ない出来事を独特の視点で切り取るヨシタケシンスケさんの新刊、あるいはパパママも、幼かった頃にきっと手に取ったであろう『いないいないばあ』や『ぐりとぐら』に、お腹がついぐぅっと鳴ってしまった『しろくまちゃんのほっとけーき』まで。
今は児童書と縁のない大人の方も、ついつい夢中になるラインアップです。
古くから語り継がれる昔話や初版刊行から半世紀以上経った昭和ド真ん中の作品に、令和生まれのベビーやキッズが変わらず笑顔になるという、本の普遍性と不思議。もう一度、読み返してみたくなりますね。
もちろん、絵本などの読み物だけでなく、歴史ある『七田式・知力ドリル』や、名前のインパクトと可愛さでイッキにスターダムへとのし上がった『うんこドリル』なども全国有数の品揃え。キッズのお楽しみから学びまで、なんでもお任せ!なのです。
そして、小学館の『図鑑NEO』シリーズを筆頭にズラーッと並ぶ圧巻の図鑑コーナーでは、ご本人にねだられつつ、お孫さんへの贈り物をあれこれ相談しながら選ぶジイジとバァバの姿も見られました。
より気軽に一冊ずつ贈るなら、動物や昆虫、乗り物などの立体模型が作れてしまう紙工作ブック『図鑑NEOのクラフトぶっく』シリーズはいかがですか? お家時間にパパママと一緒に楽しめるこのシリーズには特大ティラノサウルスが作れるものもあり、「パパの方が夢中になってしまった」なんてお話もありますが☆
海賊船の旗印をてっぺんに、帆にいっぱいの風を受けながら滑らかな船底で波を超えるゴーイングメリー号の甲板の上、麦わらの一味が大海原の先を見据えます。ひときわ長身のブルックが進行方向へと突き出した、両刃の剣の切っ先の鋭さ。そして、木と鉄でできているとしか思えない、経年変化著しい重厚なお宝の箱 —— コミックから飛び出してきたかのような精巧な立体装飾が、物語の世界へと私たちを誘います。
にしても、これほどまでに・・・
人気コミックの最新巻が発売されるタイミングなどに、出版社主催の店頭装飾コンテストがしばしば開催されるのですが、こちらは集英社の夏の風物詩、「ナツコミ2021」へのエントリーのため、時を同じくして100巻が刊行された『ONE PIECE』をテーマに、ドーン‼と作成されたもの。9月末には結果発表があり、なんと最優秀賞を獲得しました! そう、ココには、
「スゴ腕のスタッフがいるんです。その世界では有名人なんですよ!」(店長)
写真では伝わりづらいかもしれませんが、見ていただきたいのは、その質感と見事に再現された作品の世界観。
制作者である “スゴ腕” の書店員さんに伺ったところ・・・ゴーイングメリー号の丸い船底にはドライヤーなどで熱を加えて変形させ、冷まして形状を固定させるライオンボードという素材を使用。この重厚感にして、他のほとんどは発泡スチロールを使っているのだとか。
エアブラシを駆使し、色の濃淡を調整しながら塗装することで、本物そっくりの質感をうみだしているのだそうです。
近くでご覧いただくと、その凄さを実感していただけるハズ。店頭装飾は何がしか絶えず施されているので、コミック好きならずともぜひ覗いてみてください。一見の価値アリ!です。
コミックコーナーは、関東にはほとんど併設店舗がないCD・DVD売場と一緒に、ガラスの壁の向こう側に広がっています。
大規模店の多い紀伊國屋書店は、「なんでもある」が当たり前の本屋さん。ここ、流山おおたかの森S・C店は、その中でも五指に数えられる規模を誇ります。
ここまでご紹介してきたように「児童書」や「コミック」には特別な強みを持っていますが、もちろん実用書や文芸書、医学などの専門書、インテリアにも一役買うデザイン性の高い写真集や画集、洋書なども揃っています。
ご家族で訪れたら、それぞれ行きたいコーナーはバラバラのはず。ならば、入店したら集合場所と時間を決めて、いったん解散! 各々お好きなコーナーへ ——
下のお子さんとママは、まずは絵本コーナーへ。ここでは時間が掛かることが見込まれるので、文学の新刊コーナーに直行したパパがお目当ての本をいくつか見つけたら、ママと選手交代! ダイエットや日々の食卓の栄養が気になっていたママは、隣の雑誌コーナーをチェックしてから実用書コーナー →→ 入口付近の季節の雑貨コーナーへと移動するルートを辿ります。
一方、のびのびと本が選べるお兄ちゃんは、パパとママの言いつけ通り、歴史の勉強が漫画でできてしまう学習漫画の棚へ足を運び、江戸・元禄時代の巻をピックアップ。すぐさまコミックコーナーに移動して、大好きな作品の最新巻を手に、いかにしておねだりするかの策を巡らしている頃でしょう。
そうこうしているうちに約束の時間が近づいて、みんなが集合場所の入口レジに向かうなか、隣接する季節の雑貨コーナーでママを発見! 無事全員合流です。
冒頭で軽々しく「800坪」とご紹介しましたが、歩いてみると本当に広いので、お目当ての本が決まっている場合は店内5箇所に設置されている「KINOナビ」で調べてから向かいましょう。在庫状況とともに棚番号を案内してもらえ、検索結果は印刷することもできますヨ。
人生に大きな影響を与える本と出会うことがあります。
それは、宝探しのようにあれこれ見て回っている中で発見することもあれば、書架の迷路でつい迷い込んだ、いつもは足を踏み入れないコーナーの一画で、偶然出会うという “運命” も。
知識が得られるばかりか夢を見つけたり、想像の世界に旅する喜びに目覚めたり。ありとあらゆる世界の入口に通じている、知と夢と想像のワンダーランド・本屋さんで、あなたは何と、誰と、どんな出会いをするのでしょう。読書の秋から、春待つ冬へ。気忙しい毎日に、小休止。出会ってしまった本とじっくり向き合う、贅沢な時間を過ごしませんか?
迷ったときには、まずは季節の棚へ。書店員さんのセレクションは必見です。
折も折。10月初旬のこの日は、ハロウィンにまつわるコワ可愛い本がいろいろなコーナーで特集され、季節感とワクワク気分を盛りあげておりました、とさ。おしまい。
本館 2F
TEL: 04-7156-6111